リモージュボックスについて
1.リモージュボックスとは?
フランス・リモージュで作られる、ヒンジ(ちょうつがい)で繋がったポーセリン(磁器)の入れ物です。
2.リモージュボックスの大きさは?
貴族のポケットに入るサイズでしたから、手のひらに乗ります。
3.リモージュボックスの素材は?
ポーセリン(磁器)です。フランス・リモージュ地方の上質のカオリン(白磁)が使われます。レシピは工房の秘密となっています。
ある工房の例:
ケイ土75.85% アルミニウム1.89% 酸化鉄0.46% チタニウム0.46%カルシウム3.54% カリウム3.54% ナトリウム2.63% マグネシウム1.36%
4.リモージュボックスの発祥は?
1768年 |
外科医のJean-Baptiste Darneが、フランスのリモージュで上質のカオリンを発見 |
1738年 |
王室御用達のヴァンセンヌ窯設立 |
1756年 | ルイ15世の絶対王政の下、寵姫であったポンパドール夫人の提案で、パリからベルサイユに通ずる途中のセーブルに移した。 (セーブル窯。フランス革命によりいったん閉鎖され、ナポレオン1世の時代に復活) |
1768年 | リモージュの近郊でカオリンが発見されてから、これを活用することにより、従来の軟質の磁器から透明度のある硬質の磁器へと転換 |
1772年 | カオリンを使った硬質の磁器生産がはじまり、いわゆる「ロイヤル・ポーセリン」として、セーブルの名とともに、絶対王政の協力と支援の元で、全ヨーロッパを風靡 |
日本で、有田焼きが鍋島藩の元で、九谷焼きが加賀前田藩の元で栄えたのと共通するものがあります。
5.何を入れていましたか?
嗅ぎ煙草・ボンボニエール・つけぼくろ・オペラグラス・鋏・縫い針・シールワックス・薬・眼鏡・賭けのダイス・塩・口紅・アクセサリーなど
嗅ぎ煙草(スナッフ) | 鼻から吸引するタバコの摂取法。ムーミンのスナフキンもスナッフが由来という説もあります。 |
つけぼくろ |
歯痛よけのパッチが始まりでした。肌の白さを引き立たせるためという説、当時流行った天然痘のあとを隠すためという説。富裕層は絹や皮を、一般には布を、小さく切って使いました。貼る位置によって、意味もありました。 つけぼくろ師という職業までありました。つける場所によって意味があったようで、目元⇒情熱/口元⇒謙虚と、特別なメッセージでした。 男性も女性も愛用して、ドレスやパンツのポケットに 忍ばせていました。 |
ボンボニエール |
砂糖菓子を入れる小箱。欧州では,祝い事に贈る習慣があります。日本でも、天皇陛下のご成婚のお引きで物として銀のボンボニールが使われました。 今でも金平糖や小さなチョコレート、キャンディ入れとしてお使いになれます。 |
ジュエリーボックス |
weddingのリングピローとして
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縫い針入れ
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刺繍をなさる方に |
6.主に誰が持っていましたか?
18世紀のフランスでは、嗅ぎ煙草入れはsnuffboxと呼ばれ、貴族が競争してリモージュボックスを作らせ自慢しあっていました。
マリーアントワネット |
婚礼の際、52個の豪華な嗅ぎタバコ入れを持参
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ルイ14世 (太陽王と呼ばれた) |
リモージュボックスを持ち歩く事を始め、側近達に広まった。 |
ポンパドール夫人 | 73個ものリモージュボックスを、所有のセーブル窯で作らせた |
the Prince of Conde | 毎日洋服を変える度に、服に合わせたリモージュボックスを持ていた。 |
the Prince of Conde |
リモージュボックスを800個所有
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Frederick Ⅱ | リモージュボックスを1500個所有 |
◆こんなことも
①ベルサイユ宮殿の謁見の間の隣の、控えの間に、貴族達が、延々と謁見の順番を待っていました。その時に、自分が作らせたリモージュ・ボックス(嗅ぎ煙草入り)を自慢しあっていました。
②気を失ったプリンセスに、気付薬を渡す事もありました。
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◆嗅ぎ煙草について
嗅ぎ煙草は、煙草の粉を鼻の内側の粘膜に付着させて、ニコチンを摂取する喫煙方法です。
1492年、一束の乾燥した葉がコロンブスに贈呈されました。1ヶ月後、キューバから帰った部下が『インディアンが葉を吹かしている』と、報告。
その後、ヨーロッパでは医学的にも薬効があると認められ、貴金属と同格の扱いで、貴族から庶民まであっというまに広がりました。
当時、貴族の間では煙を出さない嗅ぎタバコが大流行。マリーアントワネットは、52個の豪華な嗅ぎタバコ入れを持参して、お嫁入りしました。
7.現代のコレクターは?
各国の大統領、王・皇族、著名人と呼ばれる人々に、コレクターが多い。ホワイトハウスのコレクションに、各大統領が就任時に、少なくとも1個は追加する。
ファーストレディのレーガン元大統領のNancy夫人や、ヒラリー・クリントンは、
コレクターとして有名。
エリザベス・テイラーは、愛犬をモチーフに描かせた。
エルトン・ジョンを初め、多くのアーティストが、故ダイアナ妃の慈善事業基金
を設立する時に、自画像をデザインしたリモージュボックスを出して、
資金援助しました。
8.ヒンジ(ちょうつがい)の役目は?
ポケットにいれた嗅ぎ煙草が入れ物からこぼれないようにする為に、しっかり蓋が閉まる事が必要でした。そのため、ヒンジでしっかりと上下を繋ぎました。
留金も単に留める目的だけでなく、リモージュボックスとイメージがあうように工夫がみられるものもあります。
9.リモージュボックスが高価な理由は?
手作り・手描き”peint main”なので、1点物ということになります。【型を作る】【描くと焼くのくり返し】【留金を作る】…と大変な工程を経ます。
原型の使用回数が決まっている場合が多く、その使用回数に達すると、その原型を壊してしまいます。そのため、廃盤となったものはアンティークとして高騰することもあります。
手描きの意味の「Peint Main」「Peint a la main」などの記載があります。また、作家のサインが入る事もありますし、シリアルナンバーが入る事もあります。
10.リモージュボックスの使い方は?
大人の究極のコレクションと言われていますが、プレゼントにも最適。欧米では、プレゼントのベスト3に入っています。
WiseOwlのお客様は、このような使い方を…
- 頑張ったごご褒美として、ご自分へプレゼント
- 毎年の結婚記念日や、クリスマスにご主人様からプレゼント
- お世話になった方へ感謝の気持ちをこめてプレゼント
- 毎年干支のリモージュボックスを思い出のイヤーズボックスに
- 母の日・父の日のプレゼント
- お母さまのお誕生日のプレゼント
- 指輪を入れてプロポーズ
- ご結婚のお祝い
- バレンタインデーやホワイトデーに
- 結婚式のお引きで物
- 結婚式のリングピローとして
- 成人式のお祝いにプレゼント
- 新築・転居のお祝いにお使い
- 出産祝いのプレゼント
- お子様の抜けた乳歯入れに
- お子様の初毛入れに
- 毎年、お嬢様へのバースデイプレゼント
- 入学祝いに名前入りでプレゼント
- ワインボトルの2005と書いたイヤーズ
- ボックスの中に、手紙が。『結婚しよう!』
- YEAR'S BOXを出産祝いに
11.リモージュボックスの制作工程は?
1回目は900℃で、2回目は1400℃で焼かれます。その後、冷却するときに、縮みかたが、垂直方向と、水平方向へと変わるため、形や大きさが微妙に、違ってきます。

ペイント・焼きは、最高9回まで繰り返される。色数が多い程、高価になるわけです。
Nancy du Tetre(工房Artoria)著 『The Art of the Limoges Box』より